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特殊相対性理論、のこと(4) -速く動くと長さが縮む- [科学]

物体が速く動けば動くほど、運動方向に対して縮んでしまう - 実に奇妙な現象ですが、これまでの考察を改めて見直してみると、その中にすでに結論が導かれていることに気が付くはずです。

その鍵となるのは、ここでも「光速度不変の原理」です。

「特殊相対性理論、のこと(2)」で、物体が速く走るほど、その物体に付随している事象の時間経過は遅くなるとお話ししました。これはまだ覚えていらっしゃいますか?

さて。

その物体の運動スピードに従って、「そう見える」のではなく、本当に時間の経過が遅くなっているとしたら、その中での光のスピードはどうなるでしょう。

これもまた復習になりますが、「特殊相対性理論、のこと(1)」で、光のスピードは、観測者や光源の運動スピードによらず、常に一定だとお話ししました。これが先ほども登場した「光速度不変の原理」です。

ということは、光のスピードに極めて近いスピードで移動しているロケットや宇宙船の中でも、光のスピードは本来のままのはずです。

ですが、これは大変奇妙です。

というのも、光に近いスピードで移動しているロケットや宇宙船の中の時間の流れは、常の時間よりも遅いはずです。ということは、

「速さ=距離/その距離を移動するのに要した時間」

という計算式からも、光のスピードは普通よりも大きくならなければなりません

上記の計算式から、「その距離を移動するのに要する時間」がゆっくり経過するにも関わらず、「速さ」(=光のスピード)がまったく変わることがないようにするためには、どうすればいいでしょう?

そうです。この計算式の中の「距離」が短くならなければならないのです。ここから導き出される結論は

速く動く物体は、その運動方向に対して短くなる

ということ以外にありません。


さて、このシリーズもいよいよ最後のひとつを残すのみとなりました。シリーズ最後を飾るのは、もっともややこしい「同時性の崩壊」です。頭を柔らかくしてお付き合いくださいね。(^^)


特殊相対性理論、のこと(3) -速く動くと重くなる- [科学]

実際の実験で、物体のスピードが光のそれに近づくと、加速しにくくなることがわかっています。光より遙かにスピードの遅い物体と、光にきわめて近いスピードを持つ物体を比較した場合、同じエネルギーを与えても前者の方が後者に比べて遙かに大きな加速を得られるのです。

ところで、「光速度不変の原理」をよく考えると、通常の物質が光のスピードを超えて運動することができないのは、容易に想像がつきます。では、光のスピードに近い物質はどういう状態なのか、考えてみましょう。

ニュートンの示した運動法則に、「F=ma」という有名な法則があります。普通の言葉に直すと

物体が持つ力(エネルギー)=物体の質量×物体に与える加速度

ということです。言い換えれば、ある物体に力(エネルギー)を与えると、その物体にスピードを与えることができると言うことです。

光のスピードに近づくほど、同じ力を加えても加速しにくくなることが実験でわかっています。これは最初にお話ししました。では、なぜ、同じように加速できないのでしょう。

ここで、「エネルギー保存の法則」を思い出してください。エネルギーは形を変えることがあっても、全体の総エネルギー量は変わらないとする大原則です。与え続けているエネルギーがどこかに忽然と消えてしまうなどと言うことがないことは、この大原則が保証しています。

では、改めて先ほどの公式を見てください。

加速しにくいと言うことは、先の公式の「物体に与える加速度」があまり変化しないことを意味します。ところが、物体にエネルギーをどんどん与えていますから、「エネルギー保存の法則」から「物体が持つ力(エネルギー)」は、依然、増え続けているはずです。

では、与え続けているエネルギーはどこに行ってしまったのでしょう。

もう、お分かりのはずですね。そうです。「物体の持つ力(エネルギー)」が増えても「物体に与える加速度」があまり変化しないと言うことは、与え続けられているエネルギーは、「物体の質量」を増やすために使われていると考えざるを得ないのです。

つまり、本来、物体のスピードを上げるために使われているはずのエネルギーは、いつの間にか物体の質量を増やすためのエネルギーとして使われてしまっていたのです。

これは物体の運動スピードが光に近づくほど顕著になります。ほんの少し物体を加速するためにも莫大な量のエネルギーが必要となります。これは物体のスピードが増すほど、与えられるエネルギーは物体の質量にと姿を変えてしまうからです。



さて。

ここまでご理解いただけたら、もしかすると、もうひとつの真実にも気が付かれたかもしれませんね。(^^)

光のスピードに近づくと、物体に与えられるエネルギーは、加速のために使われず、その多くは質量に変わるとお話ししました。

これはつまり、エネルギーが質量に変わることを意味します。その逆に質量がエネルギーに変わることも同時に意味しています。

どこかでアインシュタインや相対論のお話を聞いた方なら、だれでもご存じであるはずの大変有名な公式が、ここから導かれます。これこそが、かの有名な

E=mc^2

という公式の正体だったのです。

この公式は、ほんのわずかな質量が、ばく大なエネルギーに変わることを示しています。原子爆弾を製造するきっかけともなった、いわば鬼子のような公式ですが、この公式が特殊相対性理論から導き出されたのです。

さて、次の(4)では「速く動く物体の長さが縮む」というお話をしましょう。(^^)


特殊相対性理論、のこと(2) -早く動くと時計が遅れる- [科学]

前回のスレッドで、さまざまな運動状態で同じ物理法則が成り立つこと。光のスピードは観測者・光源の運動によらず一定であることをお話ししました。今、問題となっているのは、この「光速度不変」ということです。どうしてこんな現象が起きるのでしょう?

ところで、ものの速さとはどういうことなのか、思い出してください。

速さとは、一定時間の間にどれだけの距離を移動できるかを表したものです。「時速40Km」という場合は、1時間に40Kmだけ移動できる速さです。「秒速30Km」というときは1秒間に30Km移動する速さのことです。つまり

「速さ=距離/その距離を進むために要した時間」

で表すことができますね。

最初に述べたように、同じ運動状態であれば、物体の長さや大きさが変わることはありません。飛んでいるジェット機の中の1mの物差しは、同じジェット機に乗っている人から見れば、そのジェット機がどれだけ早く飛んでも1mのままです。極端に言えば、光のスピードで飛んでいるロケットであっても、同じロケットの乗組員が見る限り、1mの物差しはやはり1mです。

ここでもう一度、先ほどの速さを導く計算式を見てください。

光のスピードを測る場合、先のお話から、計算式の中の「距離」が変わらないことはお分かりになりますか? また、相手が光の場合、なぜか計算式の中の「速さ」も一定で変わることがありません。

ということは、結論はひとつだけ。

非常に想像しにくいことですが、「距離」が勝手に変わるわけでもないのに、「速さ」が一定になるように計算するためには、「時間」が変わるよりないのです。

ここで結論です。

観測者あるいは光源の移動スピードにかかわらず、光のスピードは一定でした。非常に奇妙なことですが、これは、光のスピードが一定になるように、観測者や光源の移動スピードに応じて、時間が変化していたと言うことなのです。

具体的には、観測者や光源のスピードが速いほど、時間はゆっくり経過するようになります。

とても速いスピードで移動できる宇宙船があるとしましょう。宇宙船の中の時計はいつも同じ間隔で時を刻みます。ですが、宇宙船の中の時計を外から見ている人からは、宇宙船のスピードが上がるにつれて、時計の秒針は「カチッ」から「カチン」、「コッチン」と徐々にゆっくり動くように変わって見えます。ですが、宇宙船の乗組員からすれば、宇宙船がどれほど速く飛んでいても、秒針の動きは変わりません。


今、世界には大変優秀な原子時計がいくつもあります。中には1年に1億分の1秒も誤差を生じないものもあるそうです。

2台の原子時計を用意し、正確に時間を合わせた後、ひとつは地上に、もうひとつはジェット機に乗せます。そのままジェット機を数時間飛行させた後、改めてふたつの時計を調べてみると、ほんのわずかではありますが、ジェット機に乗せた時計の方が遅れているそうです。


宇宙から地球に降り注ぐ放射線の中には、非常に寿命の短い粒子が混ざっています。中には数億分の1秒で崩壊してしまうという、実に短命な粒子もあります。

それらは仮に光のスピードで走っても、地球の大気圏に入ってわずか数メートルしか進めない計算です。にもかかわらず、地上にまで到達する粒子があります。これは相対論の効果によって、粒子の時間が遅くなった結果、本来移動できる距離の数万倍もの距離を移動できたのです。


物体が速く進むと、時間が遅くなると言う効果について、ご理解いただけたでしょうか?

シリーズ(3)では、「速く進む物体の質量が増す」ということについてお話ししましょう。(^^)


特殊相対性理論、のこと(1) -理解するためのふたつのポイント- [科学]

さて、いよいよディープな話題に入っていきますが…。(^^;

これまでパソコンなどの入門書はずいぶん手がけてきたつもりですが、科学・物理の入門はこれが初めてです。わからないところ、説明不足なところはご質問ください。私がわかりうる範囲で、できる限りご回答させていただきたいと思います。この分野は独学ですので、本人が気が付かない部分がたくさんあるかと存じます。その節はご容赦くださいませ。m(__)m

特殊相対性理論は、物体が等速度運動を行う際に適応できる物理理論です。等速度運動とは、物体が同じスピードで直線運動することを指します。つまり、その物体はスピードが速くなることも遅くなることもなく、さらにカーブすることもない状態でのみ当てはめることができると理解してください。

さて、その特殊相対性理論を解説する上で、どうしても理解していただきたい大前提がふたつあります。

  • すべての局所座標系は相対的に等しい
  • 光のスピードは、光源・観測者の運動にかかわらず、常に一定である

では、順に説明していきましょう。


1.すべての局所座標系は相対的に等しい

これは容易に理解できることと思います。

簡単に言えば、観測者がどんな運動状態にあろうと、同じ物理法則が成り立つということです。つまり、その人が立ち止まっていようと、バスに乗っていようと、ロケットに乗っていても、その中に置かれた1mの物差しは1mですし、1Kgのダンベルは1Kgです。腕についた腕時計は同じように1秒1秒の時を刻むということです。

ただし、異なる運動状態にあるもの同士を比較すると、話は変わってきます。たとえば、立ち止まっている人がロケットの中に置かれた物差しを見ると縮んで見えたり、時計を覗くとゆっくり進んでいるように見えたりします。


2.光のスピードは、光源・観測者の運動にかかわらず、常に一定である

これが常識的に考えて、いちばん理解しにくいかもしれません。

普通、運動している状態でさらに運動を行えば、その結果はふたつの運動が合わさった状態になります。

よくある例えですが、時速60Kmで走る電車の中で、電車の進行方向に向けて80Kmのボールを投げたとします。すると、電車の外で立ち止まっている人からは、ボールは140Kmのスピードで投げられたように見えます。

ここまではいいですね?(^^)

では、光の場合はどうでしょう。

懐中電灯を持った人が時速20Kmで走りながら、前方に向けてスイッチを入れたとしましょう。先の例からすれば、この場合、懐中電灯の光は「本来のスピード+20Km」となりそうですね。

では逆に、懐中電灯でこちらを照らしている人に向けて、時速20Kmで近づいたらどうでしょう。この場合も懐中電灯の光のスピードは「本来のスピード+20Km」となるのが普通です。

ですが、実際に測った光のスピードは、どちらの場合も本来のスピードのままなのです。

これが何らかの法則や計算からなされたというなら、「そうなのかな?」と思うかもしれませんが、実はこれはすべて実際の観測の結果なのです。

地球は時速30万Kmという途方もないスピードで太陽の周りを回っています。ということは、遙か遠方の星から来る光には、この地球の運動スピードが加算されていることになります。

どこかの星をひとつ決めましょう。地球は太陽の周りを回っているために、あるとき地球はその星から遠ざかるような運動をし、またあるときは逆に近づいているような運動をするからです。ということは、その星から来る光を測れば、地球の運動によって光のスピードがどれだけ変化するかわかるはずです。

ですが、どんな実験を繰り返そうと、光のスピードはまったく変わらなかったのです。つまり、地球がどのように動いていようと、その星から来る光のスピードは常に一定だったのです。

では、極端な話、光と同じスピードで飛びながら、同じ方向へ光を飛ばしたらどうなるでしょう? 実は同じことをアインシュタインも考えたと言います。「自分が光と同じスピードで運動したら、併走する光は同じところで振動する電磁波になるのか?」と。

ですが、たとえ観測者が光のスピードで動いていても、そこから発した光はやはり来のスピードで観測者から遠ざかっていくのです。

うーん…これは困りました。一般常識が光については通用しないようです。これはどう理解すればいいのでしょうか。

実はこの「光速度不変」こそ、特殊相対性理論の真髄なのです。これさえ理解できれば、特殊相対性理論は理解できたも同然なのですが、次のスレッドでさらに詳しく解説しましょう。


相対性理論との出会い、のこと [科学]

今朝、新聞を見たら、今年は「世界物理年」なんだそうです(初めて聞いた)。私が尊敬するアインシュタイン先生が100年前、立て続けに3つの物理理論を発表し、現代物理学の礎を築いたからだそうです。

私が相対性理論のことを初めて知ったのは、中学3年のときでした。私はそれまで相対性理論という言葉を聞いたこともありませんでした。

きっかけは、おそらく学級文庫としてクラスに置いてあった科学雑誌だったと思います。そこにはいびつに歪んだ宇宙船らしきイラストと、簡単な説明文がありました。「物体は、早く動けば動くほど、短くなる」そんなバカな話を、私は聞いたことがありませんでした。「でも、もしそれが本当なら、それはどうしてだろう?」このとき、何かが私の背中を押したのを感じました。

技術科の先生なので直接授業を受けることはありませんでしたが、当時のクラス担任の先生に、私は憧れていました。今思えばハンサムでも何でもない、ごく普通の先生でしたが(ヲイヲイ)、私をひとりの人間として見てくださっていたことが嬉しかったのです。

先生と一緒の時間を過ごしたかった私は、これ幸いに、「物体が早く動くと不思議なことが起きるのは本当ですか?」などなど、いろいろな質問をぶつけました(笑)。私の突拍子もない質問に、先生はその都度、真摯な態度で答えてくださいました。

ある日、先生は「これ、読んでおけよ」と本を差し出します。講談社ブルーバックスシリーズの中の1冊「相対性理論の世界」。この書籍が私に相対性理論という名前を初めて教えてくれました。

書籍は、主に特殊相対性理論を優しく解説した入門書だったと思います。でも、私の好奇心を刺激するにはこれで十分でした。

  • 物体は早く動くほど進行方向に対して縮む(実はもっともっと複雑に変形するのですが)
  • 物体は早く動くほど重くなる(たった数グラムのものが数万トンもの重さになることもある)
  • 物体は早く動くほど時間の進み方が遅くなる(宇宙船の中では数分にすぎなくとも、地球では数万年も経っていることもある)

実はここから、宇宙戦艦ヤマトの波動砲やスタートレックのワープ航法などなど、さまざまなSFチックなものへと話は進んでいくのですが、それはまた改めて。(^^)


科学の発展は本当に必要か、のこと [科学]

中学生の頃、大好きだった技術科の先生(私のクラスの担任でした)に聞いたことがあります。

「巨額を投じてロケットをポンポン打ち上げるより、同じお金で困っている人や貧乏な人たちを救う方が大切じゃないですか?」

と、先生は笑ってこう答えました。

「すべてが平均化してしまえば、その文明は滅ぶ。何か秀でたものがその文明を牽引することが大切なんだ。科学はそのための大きな力になる」


1957年。ソビエト連邦が初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げに成功しました。ですが、その当時、この意味に気付く人がどれだけいたでしょう。巨額を投じて地球を回る小さなボールを打ち上げることに、何の意味があるのかと。

今、人工衛星は私たちの生活に欠かすことが出来ないものとなりました。気象衛星による天気予報は、私たちの日常にすっかり溶け込んでいます。それぞれのご家庭には、遥か地球上空36000Kmの上空から送られてくる電波を受けるアンテナが設置されています。人工衛星からの電波を頼りに現在位置を表示するGPSを搭載したカーナビによって、私たちは迷うことなく目的地に着くことができます。

ですが、今でも日本の基礎研究は欧米諸国に比べてひどく遅れているのが現状です。研究者の不足と研究予算がその大きな原因です。

CDやDVDに利用されているレーザー光線の基礎理論は、1960年代には完成していました。最初のコンピュータは1945年に登場しています。基礎理論の研究に遅れをとった日本は、これらを実用化するのにそれから数十年という歳月を費やさねばなりませんでした。しかも欧米からは「日本人は我々の猿真似しか出来ない」と中傷されながら、です。

ニュートリノ天文学の先鞭をつけたことで、小柴先生がノーベル賞を受賞したのは記憶に新しいところですが、同様の研究施設のための資金を削減すると言う通達が政府より来ました。小柴先生が激怒したことは言うまでもありません。

「科学は難しい」「科学は面白くない」という理由で、そうした分野に進む大学生や院生はずいぶん少なくなったそうです。今、子供向けの科学教材や大人向けの入門科学雑誌などによって、何とか科学に対する興味を持ってもらおうと、出版会は悪戦苦闘しています。相対性理論とか量子力学なんて、下手なSFよりずっと面白いのに(笑)。

今、科学の最先端は、宇宙が始まってから数億分の1秒に何があったか、宇宙の果てがどうなっているのかを探しています。また、光にさえ弾かれてしまうような極微の物質や、私たちの住んでいる宇宙以外の宇宙の存在を探ろうとしています。こういう話をすると、やはり同じ疑問が口をつきます。「そんなことが何の役に立つのか」と。

たしかに、こうした知識は今のところ、まったく用は成さないかもしれません。しかし、人工衛星やレーザー光線が過去、同じように言われてきたことを忘れないでください。

そして今、多元宇宙論や量子力学を基礎理論とした「量子コンピュータ」が実用化されようとしています。衛星軌道上の研究ステーションで、地上では決して作りえなかった硬度をもつチタニウムが生産されています。これらはまだ最初の一歩に過ぎません。

これまでも、想像もつかないほどの資金と、かけがいのない人命が「科学の進歩」のために費やされてきました。それらに対する感謝と教訓を私たちは忘れてはいけません。科学が進歩するときには、かならず戦争の暗い影が付きまとってきたのも事実です。

ですが、私たちや私たちの後に続く世代のために、やはり科学は進歩し続けないといけないと、私は思います。


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