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「立体視」というもののこと [科学]

「立体視」ってご存知ですか?

古くは赤と青のセロファンを貼った、通称「3Dメガネ」による立体映画や「飛び出す映像」。あるいは偏光レンズを使用した立体写真などが、立体映像として知られています。

ですが最近は、特に特別な道具を用いることなく、立体的な画像を見ることが出来る手法が広く知られるようになりました。


上の写真は、2005年5月6日の読売新聞夕刊に掲載されていた記事を、スキャナで取り込んだものです。
一見するとただのお花畑のように見えますが、「ある手法」を用いると、このお花畑の中に「親子のカンガルー」が見えてきます。

この写真に隠された立体画像を見るためには、ふたつの手法があります。

  • 平行法
    写真に目のピントを合わせず、幾分ぼやけた状態にするのがポイントです。
    写真のすぐ下に、小さなピンク色の点がふたつあります。目のピントをぼやかしていくと、ふたつの点が重なって見えるポイントがあります。そのまま写真を見てください。
  • 交差法
    幾分「寄り目」にするのがポイントです(笑)。
    先の平行法と同様、寄り目にしていくと、ふたつのピンクの点が重なるところがあります。そのまま写真を見てください。

上の写真は、平行法で見るとカンガルーがこちら側に飛び出して見えます。逆に交差法で見るとカンガルーがへこんで見えます。

最初に私が見た立体視の写真は、単純な模様や図形でした。
はじめは何も見えませんでしたが、突然、図形が見えるんですよね。最初に見えたときはすごくビックリしました。一瞬、何が見えたのか分からなかったくらい(笑)。

この手の写真は「ステレオグラフ」などの名前でもよく知られています。書籍でも多数発売されていますから、興味のある方は探してみてはいかがでしょう。(^^)
目のレンズを能動的に使うので、目にも良いという話です(私の視力は一向に改善されませんが…しくしく)。
ここでカンガルーが見えなくとも、他のもっと単純な図形などで試されると見えると言うこともあると思います。インターネットでも関連サイトがたくさんありますので、一度お試しになってみてはいかがでしょう。(^^)


ハンス・ベーテ博士、死去 のこと [科学]

物理学者ハンス・ベーテ博士が今月6日、死去されました。享年98歳だそうです。

博士は太陽のエネルギー源が核融合であることを発見し、ノーベル物理学賞を受賞しました。
また、第2次大戦中にはアメリカのマンハッタン計画に参画し、原子爆弾を製造するための中心的人物でもありました。
戦後は核開発を批判するとともに、対イラク戦やミサイル防衛の反対声明にも著名していました。

ここに謹んで哀悼の意を表し、ご冥福を祈ります。合掌。


一般相対性理論のこと(6) -重力レンズ- [科学]

1919年。イギリスの観測チームによって、記念すべき皆既日食の観測が行われました。
このとき、観測されたものは、日食を起こしている太陽ではなく、その太陽の縁、ギリギリに映し出される、かすかな星の光だったのです。

一般相対性理論は、重力によって空間が曲がることを予言しました。
光は、その曲がった空間を通ることで同じように曲げられます。つまり、光の道筋を調べることで、本当に空間が重力によって曲がるかどうかを確かめることが出来るわけです。

太陽は、地球に比べてかなり大きな引力(重力)を持ちます。そのため、太陽の近くに見える星の光は、太陽の重力によってわずかに曲げられているはずです。
観測隊は、日食のときに太陽の縁にかすかに輝く星々を撮影しました。そして夜になるのを待ち、太陽がない状態で再び同じ空の星々を撮影しました。この両者を比較すれば、太陽があるときとないときとで、星の位置がほんの少し違って見えるはずです。
とはいえ、太陽のが持っている重力では、周りの空間はごくわずかしか変化しません。比較は慎重の上にも慎重を期されました。ですが、その結果、ほんの僅かではありましたが、星の位置がずれていることがわかりました。
その差は写真乾板の上で1/100ミリ程度。角度にして1.75秒(1秒は1度の1/3600)という僅かなものでしたが、ほぼ一般相対論が予言したとおりだったのです。

重力は光を曲げる。このことから、ブラックホールのように大きな重力を持つ天体の近郊を通る光はその進路を曲げられたり、まるで蜃気楼を見ているように虚像となって現れるのではないかと考えられました。これがいわゆる「重力レンズ効果」と呼ばれるものです。

上の図に置いて、本来、Aという位置にある星の光がブラックホール(BH)の重力の作用によって進路を曲げられた結果、あたかもA'の位置にあるかのように見えてしまうと言う現象が、重力レンズ効果と呼ばれるものです。

ところで、私たちの宇宙には、星々がたくさん集まって「銀河」と呼ばれる集団を作っています。その銀河の中心には太陽の数億倍の質量を持つブラックホールがあると言われています。
また、銀河同志はお互いの引力で引き合って「銀河団」を作っています。こうした天体が持つ重力は太陽の数億倍にも匹敵します。当然、その周囲の空間は歪み、遠方から来る星の光を曲げてしまいます。

これまで、双子みたいにとても似た姿を持つ星雲や銀河が、まるで寄り添うように観測される例がいくつもありました。それらは「何らかの原因で、ひとつの星雲が分裂したのだろう」などと言われてきたのですが、1979年、それらの天体の多くが重力レンズ効果によって、ひとつの天体がふたつ以上に見えていたことが判明したのです。

また、観測者と観測対象の間に強力な重力元がある場合、観測対象がまるで光のリングのように見えることがあります。これを特に「アインシュタイン・リング」と言います。

さらに、重力元の位置によって、ひとつの天体が4つに見えることもあります。これらは「アインシュタイン・クロス」と呼ばれます。

これら重力レンズの効果によって、天体がどのように見えるかは、「横浜こども科学館」の「重力レンズのページ」に詳しく解説されています。興味のある方は、こちらを訪ねてみることをお勧めします(http://astro.ysc.go.jp/grav-lens.html)。


さて、今回で一般相対性理論のお話はおしまいです。
思考実験で理解出来る特殊相対論と違い、一般相対論が予言している様々な現象を上手くお伝えすることが出来ませんでした。これはひとえに私の文才不足によるものです。本当に申し訳ありませんでした。
にもかかわらず、ここまでお付き合いくださったみなさんに、心よりお詫びするとともに、感謝の言葉を申し上げたいと思います。みなさん、本当にありがとうございました。

これからしばらく、ここ「Reinaの雑記帳」はいつものスチャラカなブログに戻ります(笑)。
機会があれば、量子力学を交えた「ブラックホールの蒸発」や「量子コンピュータ」、「タイムマシンの実現」などのお話もしてみたいと思っていますが、まだ未定です。またそのときにお付き合いいただけると幸いです。

それではまた、機会があればお会いしましょう。ではでは。m(__)m


一般相対性理論、のこと(5) -ブラックホールと一般相対論- [科学]

SFがお好きな方は、「脱出速度」という言葉を聞いたことがあると思います。
脱出速度とは、その天体の引力を振り切って宇宙に出てしまうためのスピードを言います。

脱出速度は、その天体の質量が大きいほど大きくなります。地球の脱出速度は秒速11.2Kmであり、地球よりも質量の大きな太陽の引力を振り切るには秒速617Kmと言うスピードが必要です。逆に地球より質量の小さい月の場合、脱出速度は秒速2.4Kmです。

さて、それでは質量がさらに大きな天体の場合、脱出速度はどうなるでしょう。ある質量に達すると、その天体の脱出速度は光のスピードを超えてしまうことが考えられます。これがニュートンの万有引力から推察出来るブラックホールです。

ですが、実際には「光速度不変の原理」があるので、このブラックホールからでも光は脱出出来てしまいます。
現実のブラックホールの場合は、その強力な重力により、空間が内側に向けて曲がっているため、どの方向に光が進んでも、結局ブラックホールの中心に向かってしまうことがわかっています。これが一般相対論から導き出されるブラックホールの姿です。

ところで、アインシュタインの発表した一般相対性理論の方程式は、まだ完全には解かれていません。ですが、限られた条件の中であれば、その答えをいくつか導くことが出来ます。
1916年。ドイツの天文学者であるシュワルツシルトが、そのうちのひとつを導き出すのに成功しました。これはもっとも単純なブラックホールを表すものとして、その後、広く知られるようになりました。

ブラックホールの周りには「事象の地平線」と呼ばれるものが出来上がります。
ブラックホールの中心から、事象の地平線までの距離(シュワルツシルト半径)は、そのブラックホールの質量によって異なりますが、どの場合も同じことは、この事象の地平線を一歩でも越えたが最後、そこからは光さえも脱出することが出来ないと言うことです。

先に、一般相対論からは「重力が強いところでは、時間の進み方がゆっくりになる」というお話をしました。
この効果によって、ブラックホールに落ち込んだものは、事象の地平線に近づくにつれて、徐々に落下スピードが落ちてきて、最後には事象の地平線で凍り付いたまま動かなくなってしまうように見えます
ですが、これはあくまでブラックホールの外から見た場合です。実際にブラックホールに吸い込まれるものには、事象の地平線を越える前も越えた後もまったく変わりなく思えます。おそらく、いつ事象の地平線を越えたのかもわからないでしょう。ですが、もうそこからは決して逃れることができないのです。

また、ブラックホールのような極度に強い重力の元では、吸い込まれる物体に対して「潮汐力」と呼ばれる力が働きます。
物体が重力によって引かれる力は、距離の二乗に反比例します。そのため、私たちが普通に地上に立っているときも、私たちの頭が地表に引っ張られる力と、足の指が地表に引っ張られる力は、非常にわずかですが異なります(足の指を引っ張る力の方がわずかに強い)。
ブラックホールのような巨大な重力の元では、その差がさらに顕著になります。私たち人間のような物体がブラックホールに落ちるとき、足下を引っ張る力と頭を引っ張る力は、非常に大きく変わります。その結果、私たちはものすごい力で引き延ばされるようにして、ブラックホールに突入することになります。

ブラックホールについては、まだまだ不思議な現象があるのですが、ここはひとまず置いておいて、次は一般相対論の「空間のゆがみ」が起こす、もうひとつの興味深い現象「重力レンズ」についてお話ししましょう。


一般相対性理論、のこと(4) -時間が遅れる- [科学]

前回は、重力によって空間が曲がるというお話をしました。今回は、空間が曲がることによって、時間にどのような影響が出るのかをお話ししましょう。

一般相対性理論によると、時間と空間は密接に結びついていることが示されます。別の言い方をすれば、空間が重力によって変化すると言うことは、それに従って時間の流れも変化すると言うことです。

結論から言えば、一般相対性理論は、重力が大きいところほど、時間の経過が遅くなることを示しています。つまり、地球上の1秒と、月の上での1秒。また太陽表面上の1秒は、それぞれ異なっていると言うことです。

宇宙には、大きな重力を持つ天体がたくさんあります。その代表が「ブラックホール」と呼ばれる天体です。
ブラックホールは、その巨大な重力のため、光さえ脱出することが出来ません。そのためブラックホールの近郊では、時間の流れが極端に遅くなります。ブラックホール近郊での1秒は、地球上での数百年、数千年にも相当することがあります。

余談ではありますが、重力によって時間の進み方が遅くなるという現象は、太陽の近郊や、この地球上でも起きています。ですが、地球や太陽の重力は極度に小さいため、時間の遅れが計測出来ないのです。

ここでブラックホールという天体が登場しました。次は、このブラックホールという超重力の天体を使って、一般相対性理論のさらなる不思議な世界をご紹介しましょう。(^^)


一般相対性理論、のこと(3) -光が曲がることは、空間が曲がること- [科学]

さて、いきなりですが、一般相対論のお話も今回が佳境です。(^^;

前回、等価原理というお話をさせて頂きました。重力によって発生する重さと、人工的な加速度によって発生する重さは等しい、と言うお話でしたね。

ここでひとつ、思考実験をしてみましょう。

ここでも再びエレベーターに登場して貰います。
エレベータの上部にはロケットが付けられており、エレベータはどんどん上に向けて加速していきます(これはすなわち、時間が経つにしたがって、エレベータの上昇スピードがどんどん速くなるということです。等速度運動でない点に注意です)。
また、片方の壁はガラスになっており、光が外部から自在に入ってこれるものとしましょう。

 

最初に述べたように、このエレベータは上に向けて加速しています。 光のスピードは有限ですから、光が上の図の「A」「B」「C」の各点を通過する際にも、エレベータはどんどん上昇していることになります。
それでは、エレベータの中にいて、一緒に上昇している人にとって、この3つの点はどう見えるでしょう?

 このように、本来は一直線に進んでいるはずの光が、加速度運動をしているエレベータの中からは、曲がってくるように見えるわけです。

ここまではよいですか?(^^)

ここで等価原理を思い出してください。
等価原理は、重力とそれ以外の加速度によって生じた重さは、区別出来ないということでした。
先のエレベータの中では、光は曲がって見えました。ということは、等価原理によって同じ加速度を生み出す重力の中では、光はこの場合とまったく同じように曲がって進むということを意味します。
ここから、「重力のある空間を進む光は、直進できずに曲がる」という結論が導かれます。

さて、ここでもうひとつ、重要なお話をしなければなりません。

あるふたつの点を結ぶ最短距離直線です。今の物理学では説明が出来ないことではありますが、ある2点を通過するは、どんなコースをとってもいいはずなのに、かならず最短距離を通ります
下の図で言えば、AからBを光が通過する場合、青い線のコースを取っても不思議ではないのですが、光はかならず赤いコースを通ります。

 

ここで不思議なことに気がつきませんか?

光は2点間の最短ルートを通ります
にもかかわらず、エレベータの中の光は曲線という「遠回り」をしました。どうしてでしょう?

ここでボールのような球面に直線を描くときのことを思い出してください。
書く人は直線を描きたいのに、ボールに描かれる直線は、ボールの表面の丸みにしたがって曲線を描きます。

ここまでくればお分かりですね?(^^)

そうです。エレベータの中でも光は直線コースを取りたいのです。でも、それが自然に曲がってしまうのは、光が通る空間がまっすぐではないからなのです。

等価原理によって、重力の中の光についてもまったく同じ結論が導かれます。
つまり、「重力の中を通過する光は曲がる」。それはすなわち、「光が通る空間が曲がっているからだ」ということです。
重力は空間を曲げるのです


残念ながら、一般相対論をこれ以上数式を使わずに理解することは難しいので、私たちが直感的に理解できるのは、このお話が最後になると思われます。
ここから先は、一般相対論の方程式から導かれる、いくつかの驚くべき現象についてお話していきましょう。


一般相対性理論、のこと(2) -理解するためのふたつのポイント- [科学]

うー…確定申告が終わって気が抜けたのか、身体が熱っぽいです…。CGソフトも来たというのに…でも、がんばろ…。


以前、特殊相対論のお話をした際、理解して頂くためのポイントをふたつあげました。
一般相対性理論を理解して頂くに当たっても、ポイントとなることがふたつあります。本論に入る前に、まずそこを押さえておきましょう。

  1. 狭い範囲でのみ、同じ理論が適応できる
  2. 重力質量と慣性質量は等しい(等価原理)

それではまず、1.について解説しますね。
自由落下」という言葉をご存じですか? 抵抗することなく、地球の重力に引かれるままに落ちることを言います。自由落下する飛行機の中では、一時的に重力の効果がなくなり、すべてのものはフワフワと浮き始めます。水は細かい球状になって漂ったりします。
先の「一般相対性理論、のこと(1)」で少しお話ししましたが、実は人工衛星も自由落下しているのです。そのため、その中では重力が一時的に消失し、いろいろなものが宙に浮いています。

この飛行機内で起きていることと、人工衛星内で起きていることはまったく同じです。つまり、非常に限定した範囲ならば、同じ理論を当てはめてさまざまな効果を説明できると言うことです。
これはつまり、広い範囲に同じ理論は当てはめることが出来ないと言うことを表します。たとえば、全長数百kmにも及ぶ飛行機があり、それが自由落下したとしましょう。すると、飛行機の先頭に乗っている人と、飛行機の尾部に乗っている人では、重力の感じ方が違ってくると言うことなのです。

では次に2.について解説しますね。
「重力質量」とは、私たちが普通に感じている「重さ」のことです。地球の引力に物体が引かれた結果、発生する重さと言ってもいいでしょう。
一方、「慣性質量」という言葉はあまり馴染みがないかも知れません。慣性とはその物体が「動きにくいか」「止まりにくいか」を表した言葉です。

ここで思考実験をしてみましょう。

今、地上にエレベータのような箱があると考えてください。中には人がいます。当然ながら、その人は地球の引力を感じています。ここまでは、よいですね?(^^)
では今度は、何もない宇宙空間に同じ箱があり、中に人がいると考えてください。当然、無重力ですから、中の人は空中を漂っています。
と、エレベータのひもの先にロケットをくくりつけます。ロケットが発射されるとともに、エレベータもロケットと同じ方向にぐんぐん加速されます。このとき、中にいる人はどう感じるでしょう?
さすがに「足下に急に地球が出現した」とは思わないかも知れませんが、引力があるとき同様、自分が足下に向けて引っ張られる感覚はあるでしょう。

さて、ここからが問題です。

それでは、ロケットで引っ張られるエレベータに、気絶させた人を乗せたとしましょう。
その人は、気が付くと自分が下向きの力で引っ張られていることを感じます。では、この人は自分が下向きの力を感じる理由を「引力のため」「ロケットで引っ張られているため」のどちらなのか、区別が出来るでしょうか

アインシュタインは、このふたつの力を「区別できない」としました。これが「等価原理」です。

今でも等価原理が正しいかどうかを確かめるための検証実験が、いろいろなところで行われています。その結果、非常に高い精度で、等価原理が正しいことがわかっています。
つまり、地球の上に置かれた物質の質量と、地球の重力加速度と同じ力で引っ張ったときにその物体に生じる質量は、極めて近い数値を示す、ということです。

それでは、この等価原理によってどんなことが起きるのかを、次に説明しましょう。


一般相対性理論、のこと(1) -「一般」と「特殊」の違い- [科学]

すでにご存じのように、アインシュタインの発表した相対性理論には、これまで紹介してきた「特殊相対性理論」の他、「一般相対性理論」があります。このふたつの理論にはどんな違いがあるのでしょう。

一言で言えば、一般相対性理論特殊相対性理論の応用範囲をさらに拡張したものです。というのも、特殊相対性理論は、かなり限定された条件下でのみ、適応できる理論だからなのです。

これまで特殊相対論を解説した中で、すでにお気づきになった方もいらっしゃるかと思いますが、特殊相対論等速直線運動を行っている物体にのみ適応できる理論なのです。
この等速直線運動という運動は、私たちの日常を考えても、かなり特殊な運動であると言わざるを得ません。

等速直線運動とは、その物体が加速も減速もすることなく、さらにコースを変えることもない状態で永遠に同じ速度で動いていることを示しています。ですが、私たちが地球上にいる限り、常に重力によって下へ下へと引っ張られていますし、それによって生じる摩擦や空気抵抗によって、運動する物体は徐々にスピードが落ちたり、逆に重力によってスピードが増したりします。
実をいうと、これは地球を周る人工衛星もまったく同じなのです。人工衛星は猛烈なスピードで動いているために、落下するはずの場所に地面がないというだけで、私たち同様、やはり地球の引力に引かれて落ち続けているのです。

つまり、本当の等速直線運動は、周りにどんな物体も存在しない、宇宙の果てへでも行かないと実現できないのです。

このように、非常に特殊な運動状態にある物体にしか適応できないところから、特殊相対性理論は、その名の通り「特殊」という名前が付いているというわけです。

ですが、これから紹介する一般相対性理論は、加速や減速、コースが曲がるといった、加速度運動を行う物体にも適応できる相対性理論なのです。

特殊相対論と一般相対論の違いをお分かりいただけたところで、徐々に一般相対論の世界に入っていきましょう。


特殊相対性理論のこと(おまけ) -視野の変化とスターボゥ- [科学]

やっと今日、確定申告が終わりました。還付金が戻ってくるまで安心は出来ませんが、とりあえず、一段落です。(^^)v

というわけで(なにが?)、そろそろまたマニアックなお話を始めようと思います。(^^ゞ 今日はその前哨戦と言うことで(笑)、復習もかねて特殊相対論のおまけのお話をさせてください。


以前、光に近いスピードで運動する場合、いろいろ奇妙なことが起きることを何回かに分けてお話ししました。ここでは実際に光のスピードに近い宇宙船の窓から、どんなものが見えるのかを想像してみましょう。

みなさんは「ドップラー効果」という言葉を聞いたことがありますか?

簡単に言うと、相対的に近づいてくる音や光の波長は短くなり、逆に遠ざかる音や光の波長は長くなる、という現象です。近づいてくるパトカーや消防車のサイレンは音程が高くなり、逆に遠ざかるサイレンは音程が低くなるというのが代表的な例ですね。

同じことが宇宙船でも起こります。宇宙船のスピードが上がるほど、前方にある星の光は、ドップラー効果によって波長が短くなり、どんどん青い色へと変化します(青方偏移)。逆に宇宙船の後方にある星はドップラー効果によって波長が長くなり、どんどん赤い色を帯びるようになります(赤方偏移)。

つまり、宇宙船の真正面にある星を中心に、前方の星はどんどん青みがかるようになり、逆に真後ろにある星を中心にどんどん赤みががって見えるようになります。それに伴って、その中間にある星々も青方偏移・赤方偏移を起こしますから、前方から後方に向けて、星の色が紫・藍・青・緑・黄・橙・赤と7色に変化することが考えられます。これがスター・ボゥ(星の虹)と呼ばれる現象です。

もうひとつ、興味深い現象が起こります。

みなさんは「光行差」という言葉を聞いたことがありますか?

今、雨が降っていると想像してください。風が吹いていなければ、雨粒は上から下へまっすぐ落ちますね。ですが、車や電車など、動いている乗り物の中からまっすぐ落ちる雨を見たらどうでしょう。乗り物のスピードが速いほど、雨粒は乗り物の進行方向から真横に降ってくるように見えますね。

同じことが光についても起こります。宇宙船が光のスピードに近づくほど、前方の星の光は光行差によって、さらに前方から迫ってくるように見え始めます。後方の星は逆にどんどん後ろに下がっているように見えるようになります。

この結果、宇宙船の中心より前の星は、宇宙船のスピードが上がるほど、どんどん前方に集約されていき、ついには前方のただ1点に集まってしまいます後方の星も同様に、すべて宇宙船の真後ろのただ1点に集中してしまいます

つまり、光のスピードで飛ぶ宇宙船から見えるのは、真正面に輝く青白い光と、真後ろに輝く赤黒い光だけです。それ以外には何もない漆黒の空間だけが広がっているわけです。


それぞれの星には固有の色がありますから、実際にスターボゥが見えるかどうかは定かではありません。ですが、すべての星の光が光行差によって宇宙船の真正面と真後ろに集約されるというのは、非常に興味深い現象だと思います。しかも特殊相対論のローレンツ短縮も加わりますから、現実にはもっともっと奇妙な見え方をするはずです。

さて。また頭の中に相対論の奇妙な世界が徐々に戻ってきたところで、もうひとつの相対論、すなわち「一般相対性理論」についてのお話を少しずつしていきましょう。(^^)


特殊相対性理論、のこと(5) -同時という概念の崩壊- [科学]

このシリーズも今回が最後です。このお話はおそらく今まででいちばんややこしいと思われます。ごまかされないように、注意してくださいね。(^^)

 これまでも、特殊相対性理論のポイントは「光速度不変の原理」だと何度かお話ししてきました。この原理を当てはめると、同じ事象でも観測者の立場によって違って見えることがあるとわかってきたのです。

ひとつの思考実験をしてみましょう(この思考実験は、岩波文庫の「相対性理論 アインシュタイン著」の中にあったものと記憶しています。読んだのがずいぶん前ですので、違っているかもしれません。その節はご容赦ください)。

直線の線路上に、貨車が置かれています。貨車の真ん中には電球がひとつ置いてあり、貨車の中は外からも見えるようにガラス張りになっていると思ってください(図が下手くそなのはご容赦ください。誰が何と言おうが、これは貨車の中の電球です。コケシではありません!)。

貨車の中と外には観測者がひとりずついることとします。

今、貨車はまったく動いていない状態です。ここで貨車の中の人が電球のスイッチを入れます。すると、電球から出た光は同時に貨車の左右の壁に届きます(断っておきますが、この図はあくまで電球から出た光の図です。縛られたコケシではありません!)。

貨車の外にいる人から見ても、電球から出た光は同時に貨車の左右の壁を照らし出したようにみえます。

ここまでは良いですね?(笑)

さて、今度は貨車が画面を右から左へ一定のスピードで動いていると思ってください。

貨車の中にいる人が、再びスイッチを入れます。すると、電球から出た光は貨車が停止していたときと同じように、貨車の左右の壁を同時に照らします。先ほどの図とまったく同じですね。

では、これを貨車の外で見ていた人にはどうみえるでしょう?

貨車が動いていても、先ほどの図と同じように見えるというのが普通の回答です。でも、よく考えてください。

光速度不変の原理」とは、「光源や観測者の移動スピードによらず、光のスピードは一定である」と言うことでしたね? 貨車が移動しているにもかかわらず、電球から発した光が貨車の両側の壁が同時に照らされると言うことは、私たちが無意識のうちに、光の本来のスピードに、「貨車の移動スピード=電球の移動スピード」を足してしまっているのです。まず、このことに気が付いてください。

一度電球から発した光は、貨車の移動スピードによらず貨車の左右の壁に向かって進みます。ですが、光が進む間にも貨車は移動しています

ということは、この例の場合、貨車の右側の壁に先に光が到着し、続いて左側の壁に光が到着するわけです。

おかしな事になりました。貨車と一緒に移動している人「電球の光は左右の壁に同時に届いた」と言うでしょうし、貨車の外から見ていた人「電球の光は、まず貨車の右側の壁に届いてから、左側に届いた」と言うでしょう。

この場合、どちらの主張が正しいのでしょう?

実はどちらの主張も正しいのです。「光速度不変の原理」を考慮すると、同じ時刻に起きたはずの事件が、観測者の立場によって別々の時刻に起きたように見えるのです。


最後の最後で、お見苦しいイラストをお見せしてしまいました。読んでくださったみなさんには心より謝罪いたします。m(__)mm(__)mm(__)m

これで特殊相対性理論についての考察は終わりとさせていただきます。

今まで、私のつたない解説に辛抱強くついてきてくださったみなさんには、感謝の言葉もありません。中には回りくどかったり、わかりにくい部分も多数あったと思います。本当に失礼しました。m(__)m

今月の終わりくらいから、遅まきながら東京の実家へ帰省いたします。もしかしたら、その後、一般相対論や量子力学などについてのお話を書かせていただくかもしれませんが、そのときにはまたよろしくお願いします。m(__)m

とりあえずは、またいつも通りのお気楽極楽なブログに戻ります(笑)。では、機会がありましたら、いずれまたそのうちに(笑)。ではでは。(^^)


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