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特殊相対性理論、のこと(5) -同時という概念の崩壊- [科学]

このシリーズも今回が最後です。このお話はおそらく今まででいちばんややこしいと思われます。ごまかされないように、注意してくださいね。(^^)

 これまでも、特殊相対性理論のポイントは「光速度不変の原理」だと何度かお話ししてきました。この原理を当てはめると、同じ事象でも観測者の立場によって違って見えることがあるとわかってきたのです。

ひとつの思考実験をしてみましょう(この思考実験は、岩波文庫の「相対性理論 アインシュタイン著」の中にあったものと記憶しています。読んだのがずいぶん前ですので、違っているかもしれません。その節はご容赦ください)。

直線の線路上に、貨車が置かれています。貨車の真ん中には電球がひとつ置いてあり、貨車の中は外からも見えるようにガラス張りになっていると思ってください(図が下手くそなのはご容赦ください。誰が何と言おうが、これは貨車の中の電球です。コケシではありません!)。

貨車の中と外には観測者がひとりずついることとします。

今、貨車はまったく動いていない状態です。ここで貨車の中の人が電球のスイッチを入れます。すると、電球から出た光は同時に貨車の左右の壁に届きます(断っておきますが、この図はあくまで電球から出た光の図です。縛られたコケシではありません!)。

貨車の外にいる人から見ても、電球から出た光は同時に貨車の左右の壁を照らし出したようにみえます。

ここまでは良いですね?(笑)

さて、今度は貨車が画面を右から左へ一定のスピードで動いていると思ってください。

貨車の中にいる人が、再びスイッチを入れます。すると、電球から出た光は貨車が停止していたときと同じように、貨車の左右の壁を同時に照らします。先ほどの図とまったく同じですね。

では、これを貨車の外で見ていた人にはどうみえるでしょう?

貨車が動いていても、先ほどの図と同じように見えるというのが普通の回答です。でも、よく考えてください。

光速度不変の原理」とは、「光源や観測者の移動スピードによらず、光のスピードは一定である」と言うことでしたね? 貨車が移動しているにもかかわらず、電球から発した光が貨車の両側の壁が同時に照らされると言うことは、私たちが無意識のうちに、光の本来のスピードに、「貨車の移動スピード=電球の移動スピード」を足してしまっているのです。まず、このことに気が付いてください。

一度電球から発した光は、貨車の移動スピードによらず貨車の左右の壁に向かって進みます。ですが、光が進む間にも貨車は移動しています

ということは、この例の場合、貨車の右側の壁に先に光が到着し、続いて左側の壁に光が到着するわけです。

おかしな事になりました。貨車と一緒に移動している人「電球の光は左右の壁に同時に届いた」と言うでしょうし、貨車の外から見ていた人「電球の光は、まず貨車の右側の壁に届いてから、左側に届いた」と言うでしょう。

この場合、どちらの主張が正しいのでしょう?

実はどちらの主張も正しいのです。「光速度不変の原理」を考慮すると、同じ時刻に起きたはずの事件が、観測者の立場によって別々の時刻に起きたように見えるのです。


最後の最後で、お見苦しいイラストをお見せしてしまいました。読んでくださったみなさんには心より謝罪いたします。m(__)mm(__)mm(__)m

これで特殊相対性理論についての考察は終わりとさせていただきます。

今まで、私のつたない解説に辛抱強くついてきてくださったみなさんには、感謝の言葉もありません。中には回りくどかったり、わかりにくい部分も多数あったと思います。本当に失礼しました。m(__)m

今月の終わりくらいから、遅まきながら東京の実家へ帰省いたします。もしかしたら、その後、一般相対論や量子力学などについてのお話を書かせていただくかもしれませんが、そのときにはまたよろしくお願いします。m(__)m

とりあえずは、またいつも通りのお気楽極楽なブログに戻ります(笑)。では、機会がありましたら、いずれまたそのうちに(笑)。ではでは。(^^)


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参明学士/PlaAri

こんにちは!特殊相対論講義ありがとうございました。登場が遅れてしまい申し訳ありませんでしたm(__)m。全編を楽しく拝読させて頂きました~。
復習させてもらって感謝です。「うんうん、そうだそうだ。」などと口走りながら読んでいました。普通に暮らす人間にとってわかりにくいのは、やっぱり「時間」の問題でしょうね。ある種、生活の中で絶対的な機軸になっている時間が相対的であるとは科学的思考が進んでいる現代人でも理解しがたいのも当然なのかもしれません。光のスピードは秒速30万kmでしたか?まだ人類の叡智のスペースシャトルが秒速20km位であることを考えると、タイムマシンは相当先だなぁと思ってみたりします。あまり理論物理学はかじっていないのですが、あの世界ではタイムマシンはすでに「可能」とされているとか…。

ともあれ、時間に代わって登場してきた絶対的な「光」の持つ性質は全く困ったもので(笑)、「速度不変」に加えて「波&粒」ときたもんですものね。
今、土星で話題のオランダ?の物理学者ホイヘンスが波動説、確かニュートンが粒子説の提唱者でしたよね…。
で、答えは「どっちも正しい!」←ふざけるな!!!という、困ったちゃんですから。はぁ(笑)。kyaoさんの今後の解説にも登場すると思っています。楽しみにしております。
実は私もイギリスの物理学者ヤングの実験をやったことがあります。「ダブルスリットの実験」というあれです。全然観測できませんでしたが(苦笑)
もう、波でも粒でもいいっす。お任せします(笑)
今後の期待は「超ひも理論」ですね。これをやったら確実にノーベル賞ですね。またユダヤ人がかっさらっていくような気がしますね。
アインシュタインも、ボーアも、オッペンハイマーもみんなユダヤ人…。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-16 15:19) 

kyao

参明学士さん、こんにちは。レスをありがとうございました。so-netブログへの提唱、どうもお疲れ様でした&ご苦労様でした。

>復習させてもらって感謝です
私の方こそ、いろいろ復習する機会をいただいたようでありがたかったです。
人に何かを伝えると言うことは、それがすでに知ったつもりになっていることであっても、やはりうろ覚えになっていたり、いい加減になっていることが多いものだと改めて認識しました。

>タイムマシンはすでに「可能」とされているとか…。
うーん…この場合、タイムマシンの定義がいささか問題になってくると思うのですが。多元宇宙論の元、タイムマシン「らしきもの」を作ることは論理的には可能です。ですが、厳密な意味でのタイムマシンは、理論的に不可能であると思いますよ。(^^)

>波&粒子
これは量子力学の範疇ですね。ここは本当に「考えるな。暗記せよ」の世界なので、解説そのものが難しいのですが…。
参明学士さんが仰っている「干渉縞の実験」にしても、ふたつのスリットを使い、「光=波」と見立てて干渉縞を観測することもできますし、スリットの向こうにシンチレーションカウンターなどを置いて「光=粒子」として観測しても干渉縞が観測できます。実に不思議ですね(笑)。
ただ、物質波の存在はド・ブロイが実際の観測で確認しています。ここから、どんな物質でも粒子と波の性質を持つことが証明されてしまいました。ややこしいですよねえ。(^^;

>超ひも理論
超弦理論は、今のところ、自然界の4つの力を統一して説明できるのではないかと期待される理論のひとつですね。ただ、重力子の観測とかコンパクト化されてしまった次元の存在とか、証明しなければならないことが山ほどあります(笑)。同様のツイスターを含んだ理論はほかにもたくさんありますから、そっちの方にも期待でしょうか。(^^)
by kyao (2005-01-16 15:43) 

kobakoba

コメントするのが恐ろしいような専門的会話の
後に・・・・
私が読んだ本でも電磁波と光は「波長」の違いは
あるが「一緒」だとありました。だから「波」の特性を
もつ「光」も合成できるのだと。
マア、底がバレナイうちに、お疲れさんでした。
by kobakoba (2005-01-16 16:56) 

MiLD_GiNGER

おつかれさまでした!
なんだかボクの中の常識は崩れてしまったというか
常識というよりは当たり前だと思ってたことがそうではなかったという感じでしょうか
参明学士さんとkyaoさんの会話には???と言った感じですが
さわりくらいは理解できたでしょうか
次のねたも期待しています(^^)b
by MiLD_GiNGER (2005-01-16 18:34) 

kyao

kobakobaさんへ
>専門的会話
いえいえ、そんなことはないです。何と言っても私が理解できるくらいのレベルですから(笑)。
つまり、ある程度物理を知っている人が対象である場合、余計な言葉を省くことで効率的に話ができる、というだけのことです。今度予定している一般相対論や量子力学を覚えていただければ、kobakobaさんにも絶対にお分かりいただけますよ。(^^)

>電磁波と光
ちょっち難しくなりますが、電磁波の性質を記述したマックスウェル方程式という有名な方程式があるんですが、これによると電磁波も光もまったく同じものであることがわかります。つまり、電磁波を波としてとらえると「電波」であり、粒としてとらえると「光量子」すなわち光子になるんですね。(^^)

MiLD_GiNGERさんへ
>常識というよりは当たり前だと思ってたことがそうではなかったという感じ
ふふふ。そう思っていただければ、私のこの企画は半ば成功したと言えます(笑)。「常識=経験の積分」ですが、日常、あまりに身近すぎて気が付かないことの中にも、こんなミステリーゾーンというか「世にも奇妙な物語」が潜んでいるわけです(笑)。そういう気分を味わっていただければ幸いです。(^^)

>次のねたも期待しています
うお。嬉しいような怖いような(笑)。でも、お世辞でもそういって頂けて嬉しいです。どうもありがとうです。
次は間違いなく2月に入ってからですが、それまでにのんびりと考えさせていただきます。再開した際にはよろしくお願いします。(^^)
by kyao (2005-01-16 20:38) 

参明学士/PlaAri

ちょっと話題がそれてしまうのですが…。
今、話題のホイヘンスについてのkyaoさんのご感想をお伺いしたいのですがよろしいでしょうか?
タイタンに着陸したホイヘンスは観測後、「捨てる」んですよね。回収なしですよね?それってどう思います?あんなところにまで人間のゴミを…。
火星のテラフォーミングも似たようなもので、火星に向かうのにホーマン軌道を使うかどうかは別として、火星から飛び立つ時には「火星の資源を使って」飛び立つ予定が立っていると聞いています。
率直に言って「?」が頭をよぎるのです。なぁーんか、こう、しっくりこないというか、なんと言うか…。
by 参明学士/PlaAri (2005-01-16 22:50) 

kyao

参明学士さん、こんにちは。レスをどうもありがとうございました。私の意見がご参考になるかどうかはわかりませんが、思いついたことをお話しさせていただきます。

>宇宙に捨てるゴミ
そうですねえ…正直言って、現状、あれらを回収するとかいう部分まで意識は進んでいないと思われます。
確かにこれらは当面、宇宙のゴミとなるわけですが、金星や火星、タイタンは今後、テラフォーミングの対象となりうる天体ですから、そのときに一生懸命ゴミ拾いをしてほしいなと。(^^ゞ ただ、その際には「最初に足跡を記した貴重な骨董品」として回収され、どこぞの博物館行きになるのではないかとも思っています。同様に、月面に残された月着陸船とかも、月に恒久的施設が建設された時点で記念碑的に扱われるようになるのではと、私は期待しています。

それより当面の問題は、地球の衛星軌道上ならび月と地球の間に存在している大小さまざまなゴミですよね。大は切り離されたロケットや廃棄された衛星。小は剥がれ落ちた塗装の皮膜まで、いろいろなものが秒速8Kmというとんでもないスピードで飛び交っているわけです。
詳しくは「プラネテス」というマンガを読んでいただきたいのですが、これら軌道には近い将来、SSTSなども接近するはずですし、建設中の国際宇宙ステーションにも大きな影響を与えかねません。今後の宇宙開発の大きな障害となるばかりでなく、未曾有の事件に発展しかねないものですから、なるべく早急に手を打つ必要があると思います。
by kyao (2005-01-16 23:16) 

5回にわたるこのシリーズ、ホントに通ってよかったです☆
んーー、何ていうんですかね、「フォーマット完了しました」みたいな感じでしょうか。コレを基礎に色々考えたり本とかをかじってみようと思います。次回シリーズに期待してます。
by (2005-01-17 01:55) 

kyao

スナフさん、こんにちは。レス、どうもありがとうございました。
>通ってよかったです
おお、そういって頂けると、お世辞でも嬉しいです。いろいろ至らぬところもあったと思いますが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
次は題目・日程いずれも未定ですが、始めた際はお付き合いのほど、よろしくお願いします。(^^)
by kyao (2005-01-17 07:49) 

kiyo

ほほー。
なるほど、ブラックホールがタイムマシンとはよく言ったものですねぇ。
by kiyo (2005-01-17 11:46) 

kyao

kiyoさん、こんにちは。レスをどうもありがとうです。

>ブラックホールがタイムマシン
えっと…ブラックホールがタイムマシンになると言うお話を差し上げたつもりはありませんでした。私の書いた文章で、何か誤解を招くような部分があれば大変恐縮です。
補足させていただければ、一般相対論は時間と空間が常に密接に関連していることを示唆しています。そのため多元宇宙論を元に考えると、いくつかの方法でタイムマシンもどきが作れるかもしれない、ということなんですね。
by kyao (2005-01-17 13:24) 

kiyo

ん?ああ、それは分かってるんですが~。。。
速さが質量を生み、そして速いほど時間が遅くなるのならば、速ければ速いほど質量は大きく時間は遅くなるということですよねぇ。
んじゃー、負の質量空間である(と言う話)ブラックホールでは速さが一定ならば時間は逆行する可能性があるってことじゃないかなぁと思ったのですね~。
ん~。飛躍しすぎですかぁ(笑)
風邪気味でぐたぐたなので許してください~。
by kiyo (2005-01-17 17:08) 

kyao

負の質量空間、ですか?…そこの部分をもう少し詳しく伺いたいのですが…。
ブラックホールの内部、つまりシュワルツシルト領域の内側では、その空間の特質上、空間移動ができないため、暫定的に空間を移動することは時間移動に等しいとは言えます。ですが、あくまでそれは空間と時間の関係を便宜的に示したもので、現実の時間移動を表したものではないと思うのですが??…。
by kyao (2005-01-17 19:11) 

参明学士/PlaAri

kyaoさん、こんばんわ!コメントありがとうございます!うれしいですm(__)m
私のところは結構な状態なので(ご存知の通り)、こちらで趣味系の話を続けたいんですが、一人友人を紹介させてください~。彼は私と違って正真正銘の理系です。私は正真正銘の文系ですが…(笑)
たのしくコメントしあえそうなんで、よろしくお願いします。
「楽俊」さんといいます。近いうちにコメント下さるようですので、私も混ぜてお話させてください~m(__)m
by 参明学士/PlaAri (2005-01-17 23:01) 

楽俊

はじめまして(^ ^)、参明学士さんの紹介で特殊相対性理論について読ませて頂きました。
ブログでこんなに難解な話を書かれている事と、その分かりやすさに感動してしまいました(^ ^ ;
相対性理論については、幼い頃から親に教えてもらったり、本を読んだりと本当に興味深く勉強した記憶があります。難解でアインシュタインが提唱者だって聞くと一回勉強してみたくなっちゃいますよね。
これから、一般相対性理論や量子論についても書いて頂けるようなので、本当に楽しみにしています。特に一般相対性理論は、なんか全然ちんぷんかんぷんで。。。分からなくて投げてしまったので絶対読みますね!
あ、でも量子論も大学の講義でならったのにあんまり覚えてない。。。ですね。
シュレディンガーの猫とかですよね?教材に載ってるのがかわいい猫で、数式の横に一匹だけいたので鮮明に覚えてます(^^)。
さて本題の特殊相対性理論についてですが。
質問が一点と少し話をお聞きしたい話題が一点あります。
質問
「通常の物質が光の速度を超えて運動する事はできない」という所でエネルギー保存の法則を用いて説明されていましたが。
これに関しては実際の証明実験などはされた事があるのでしょうか?あるいは、計算で証明されたのでしたら、エネルギーと質量、速度の関係についてもう少し詳細に知りたいです。
例えば、エネルギーを与え続ければ光の速度に達する事はあるのか?またそれを超える事も可能なのか?
とか、ある運動をしている物体において与えたエネルギーの質量と加速度への変換の割合は計算できるのか?など。。
この物体が光の速度に達する時に起こる問題については、まだ一つ理解が足りなく。。いつも苦労しています。
よく聞く話だと、「光速に達するまえに質量が無限になってしまうから、光子以外のものが光の速度に達する事はできない」なんて言われたりします。
もしそうだとしたらこの事はどのように証明されているのでしょうか?
あ。。。質問なのにこんなに長くなってしまいました。
すみません。。
もしお時間があればもう少しお付き合いください。
次は、特殊相対性理論についての話題ですが。
これは、少し範囲が広くなってしまいますが、相対性理論を論じる際に宇宙に関連してその確らしさが述べられていると思います。
その一つにビッグバーン理論でよく用いられる光の赤方偏移がありますよね。宇宙が膨張している根拠になっていると思います。この赤方偏移の現在の解釈は、宇宙後退速度のドップラー効果によるとされていると思います。
この点について、光の時間的なエネルギーの減衰という事はあり得るのでしょうか?もし時間的な減衰が存在するなら、光が移動してきた時間に伴ってエネルギーを失い本来の波形よりも赤方に偏移することも考えられるかなと。そうであれば、宇宙の膨張と光の赤方偏移の関係は認められないですよね。この前友人と議論した内容なのですが。ポイントは光が時間と共にエネルギーを減衰する事があるのか?です。もし興味があれば、意見を聞かせて頂けると嬉しいです。
はじめましてで、非常に長くなってしまい恐縮です。
久しぶりにこのような話ができたもので、少し熱くなってしまいました。
今後もブログ読ませて頂きますね♪
長い間お付き合い頂いてありがとうございました。
by 楽俊 (2005-01-18 00:20) 

kyao

参明学士さんへ
こんにちは。レス&お友達をご紹介くださり、ありがとうございます。
お友達もすぐにレスをつけてくださいました。参明学士さんのお友達だからでしょうか、とても丁寧に言葉を選んでのお話しの仕方に、大変好感が持てました。感謝です。これからもよろしくお願いしますね。

楽俊さんへ
はじめまして! わざわざ訪ねていただき、恐縮です。早速お書きいただいたレスを拝見しました。大学で理系の講義を受けていらしたことがあり、お父様からも相対論の話を聞いたことがあると言うことでしたね。うーみゅ、凄いです。そんな方に独学しただけの私が知ったかぶりにお話ししてしまって良いものかどうか…本当に恐縮です。(^^;
私のつたない知識で、ご満足いただけるお答えができるかどうか不安ですが、悪い頭を精一杯使って(笑)ご回答させていただきます。よろしくお願いします。

>「通常の物質が光の速度を超えて運動する事はできない」という所で
>エネルギー保存の法則を用いて説明されていましたが。
>これに関しては実際の証明実験などはされた事があるのでしょうか?
これは通常の物質が光のスピードを超えることができないことを、何らかの実験あるいは数式によって証明したことがあるか? という意味であると理解しましたが、それで正しいでしょうか?
私が知っている範囲では、という言い方で恐縮ですが、おそらくはなされていないと思います。特殊相対論が唯一物質の運動スピードに制限を与えた物理方程式です。おそらく追記実験は今も行われていると思われますが、この方程式に論理的矛盾点などが発見されることがなければ、見直されることもないのではないでしょうか。
また、漸近的に光速に近づけるかというお話についてですが、物理的・技術的には可能だと思います。ただ、問題はそれを達成するための研究施設の建設費用がばく大だという部分ですよね。今、スイスのセルン研究所で使用している円形粒子加速器を使うと、電子を光速の99.9999%くらいまで加速できると聞きました。ですが、それ以上になるとさらに大型の施設が必要になってしまうので、それ以上の追試は難しいかと思われます。
また、通常の物質を光速以上に加速することが可能か、と言うお話についてですが、特殊相対論を使うと、光速以上のスピードを与えた場合、ローレンツ変換式によると特異点が発生してしまうため、論理的には不可能ではないかと思われます。ただし、相対論そのものが量子化されていないため、理論で証明できないだけで、どこかに抜け穴がある可能性は否定できないと思われます(笑)。
エネルギーを物質に与えた場合の加速度並び質量計算ですが、ローレンツ変換式がその答えを与えてくれるものと思います。パソコンで計算する場合、以下のようになるかと思われます。
sqr(1-(v/c)^2) …ここで「sqr」は平方根を求める関数。vは物体の運動スピード、cは光速です。
この計算結果に物体の長さを掛ければスピードvのときの長さを求めることができます。同様にこの計算結果で物体の重さあるいは経過時間を割ると、それぞれスピードvのときの物体の質量や経過時間の変化を知ることができます。重さがわかれば加速度が計算できますので、是非お試しください(笑)。

最後のご質問ですが。
>時間の経過に従って、光が赤方偏移するか?
というお話ですが、これは特殊相対論ではなく、一般相対論の範疇ですね(笑)。
結論から言えば赤方偏移はしないと思います。重力の影響下にあれば、時間経過に従ってメスバウアー効果により赤方偏移しますが、何もない真空中を移動するだけで光は赤方偏移しません。
楽俊さんが仰っているのは、おそらく宇宙の黒体輻射に関する問題だと思います。ビッグバンの際に生まれた光が、宇宙の膨張に従って徐々にエネルギーを失い、現在は2.3度ケルビンの輻射エネルギーとして宇宙に充満しているというお話ですよね?
この場合、考慮しなければいけない問題は、ビッグバンの際、何もない空間に物質が猛烈な勢いで拡散したのではなく、物質と同時に空間も発生したと言うことです。つまり、光は何もない空間を突き進んだわけでなく、「膨張する空間」を突き進んだわけですね。爆発的に膨張する空間内を飛んだために光はエネルギーを失ったというわけです。

以上がいただいたご質問に関する答えです。ご満足いただける回答ができたかどうか、はなはだ疑問ではありますが、いかがでしょうか。
また何か疑問などありましたら、お話くださいませ。私が理解している範囲でお答えさせていただきます。気が向きましたら、またお越しくださいね。お待ちしています。(^^)
by kyao (2005-01-18 09:28) 

楽俊

論のまとまりのない質問にたいして、本当に丁寧に正確に返答いただいてありがとうございます。
質問の大意、とても正確に捉えていただけていると思います。
光の速度に関する返答は、ローレンツ変換式で求められるんですね。
非常にすっきりした式をいただけたので、今度時間のあるときに計算してみたいと思います。パソコンでしたらプログラムしてみるのも面白いかと思っています。もしシュミレーションができましたら、また報告させて頂きますね。

>ただし、相対論そのものが量子化されていないため、理論で証明できないだけで、どこかに抜け穴がある可能性は否定できないと思われます
こういう部分ってまた面白い報告書が出てくるといいですよね。きっと僕などが読んでも理解に苦しむだけなのでようが(^^;

さて、いよいよ光の赤方偏移についてですが。
ポイントであった、光エネルギーの時間的減衰の可能性については、返答していただいた内容の重力と黒体輻射が要因として考えられますよね。。まあ、この時間的減衰自体が、私の勝手な仮説なのですが。もう少し勉強して考えてみたい内容です。

実は、この話をさせて頂いた元がありまして。
ビッグバーン理論では、現在宇宙の寿命は140億年程度と言われていますよね。しかしながら、近年のハッブル望遠鏡の観測によって計算上宇宙の寿命を越えてしまう球状星団が発見されたりしています。
また、宇宙の端では、光の速度で宇宙が膨張しているために、この宇宙の寿命を越える距離、あるいはこれに近い距離に銀河などが観測された場合その銀河は、光速以上の運動をしているという矛盾をはらんでないでしょうか?
ハッブル望遠鏡より得られる観測結果は近い将来そのような問題を提起してくるように思います。
少し宇宙論の話に近いですね。。。
ブログの主旨に沿わないようで少し心配ですが。
もし宇宙論にも興味がおありでしたら、お付き合いください。
ビッグバーン宇宙論と、膨張宇宙説この二つが現在宇宙論の主軸ですよね?
この点について私は、若干の疑問を抱いています(インフレーションなどを含む宇宙誕生のきっかけ、先述の点)。
定常宇宙論や、無始無終、無限の広がりを持つ宇宙を考えても良い気がしています。
地球に生きている私たちにとっては、想像しずらい事ですが。
絶対時間も絶対空間も存在しない宇宙にとって、始まりと終りを決める事は本当に必要な事なのか?五億光年以内を同時存在と定義する理論では、少し納得いかない!って思ったりします。
アインシュタインの時間の考え方は、このような問題にたいする大切なヒントではないかと。
なんか、また、長くなってしまいました。
しかも漠然としています。
すみません(><)。
あの。希望なのですが。
もしよろしければ、宇宙論についても書いていただけると、感動です。
なんか、この一文だけ書けば良かった気がしてきました。。
長い文章お付き合いいただいてありがとうございました。
by 楽俊 (2005-01-18 19:31) 

kyao

楽俊さん、こんばんは。長大な文章を読んでくださり、ありがとうございました。またお寄りくださって嬉しかったです。(^^)

ローレンツ変換式はPCなどでシミュレートする際、光速の99.999999%くらいからグラフ化すると面白いですよ。みるみる事象が変化していくのがわかります(笑)。

>宇宙の端では、光の速度で宇宙が膨張しているために、この宇宙の寿命を
>越える距離、あるいはこれに近い距離に銀河などが観測された場合
>その銀河は、光速以上の運動をしているという矛盾をはらんで
>ないでしょうか?
これはかねてより「事象の地平線」問題として、天文学者を悩ませていた問題ですねー。
私たちの宇宙は、ビッグバンの際、光速を越えるスピードで膨張したことが観測の結果わかっています。そのため、現在観測できる領域よりも宇宙が広くても、いわゆる「宇宙の晴れわたり」として知られる時間以上に過去に遡ることができないんですね。だから実際の宇宙の年齢が、楽俊さんが仰っているように140億年なのか、あるいはそれ以上なのかは想像がつきません。ハップル定数が間違っていることも十分ありますしね。

現在の宇宙が膨張していることは、遠くの銀河団の観測からも間違いはないと思います。ただ、定常宇宙論も死滅したわけではないと思います。定常宇宙論者が言っているように、今、一時的に宇宙が膨張しているように見えるだけ、と言う解釈もできますし。計算していくと、(目に見える物質だけならば)1立方メートルにつき、1年にひとつ水素原子が発生するだけで、現在の物質密度は保てるそうです(その水素原子をどこから取り出すのかが大問題ではありますが)。

ビッグバン宇宙論を話すとき、どうしても腑に落ちない部分がひとつ。現在の宇宙の角運動量ってどこから来たか、説明できないんですよ。
つい最近まで2.3Kの黒体輻射が、宇宙のどこでもあまりに均一なことが問題でしたが、KOBEというX線観測衛星によって、非常にわずかな揺らぎがあることがわかり、この問題は解決しました。
でも、物質密度の揺らぎからだけでは、天体の回転運動は発生しません。つまり、ビッグバン以降、どこかで物質は角運動量を得なければならないんですが、そのメカニズムがわかっていません。

実は私も宇宙論は大好きです(笑)。こういうお話をしているだけでワクワクします(爆)。でも、こういう場で論じるにはあまりに漠然としているので不向きなんですよねー。残念。(;_;)
by kyao (2005-01-18 19:59) 

参明学士/PlaAri

kyaoさん、丁寧なコメントを頂いてありがとうございます。また、快く友人とのやりとりをしていただいて感謝していますm(__)m
難解なことを「さらっと」仰るあたり、いい風が吹いています~。
彼は実はバリバリの理系で今、ドクター候補生ですから、きっと会話も盛り上がるかと思って連れてきてみました。私の見る目に狂いはなかったようです。
楽俊さんもコメントありがとう!!って、私が一番楽しんでるかも(笑)
で、私も混ぜてください^^。ガリガリの文系人間が理系にアタック!?(笑)
無謀ですが素人考えで口を挟んでみます。コメントにあった全部の分野だとものすごく長くなりそうなので、宇宙論にちょっぴりだけ。

結局、光って一体何?というのが常に付きまとう私の疑問です。クォークの集合?だったら質量はあってもおかしくない?可視光・不可視光は理解できますが、周波数の違いなどで光の速度に違いは出たりするのか?波であり粒であり…。うまく感覚がつかめません。誰かわかりやすーーく教えてください(笑)

一応、宇宙のことをまとめてみると、宇宙の年齢は137億歳と算出されていますよね。今の段階で確認できる一番遠い天体が128億年前の銀河ですね。とりあえず宇宙誕生後9億年の姿はすばるで捉えることができているわけです。それ以上の厳密な観測はJELT計画の完成を待って可能かどうかがわかるわけですね。それだって確実だとは言い切れないとは思います。とりあえず現在のところ観測不可能となれば、予測を立てるということになります。予測に使うのは一般相対性理論と、それから導かれるフリードマン方程式ということになるでしょう。それは置いといて…。

>(光が)重力の影響下にあれば、時間経過に従ってメスバウアー効果により赤方偏移しますが、何もない真空中を移動するだけで光は赤方偏移しません。

宇宙空間を光が通過する時に重力のないところばかりを通ってくる保障はないはずですね。一般相対論で明らかにされているように、巨大な質量を持つものは周辺の空間をひずませるわけですし。その「ひずみ」を通る時に光に変化(重力による赤方偏移)は起きないのでしょうか?もし変化が起きるなら、ひずみを通ってきた光はひずみを通過した後には元の姿に戻るのでしょうか?
また、仮に楽俊さんの言うように光の時間的なエネルギーの減衰が起こりうるとしたならば、JELT等の観測にかかる前に光はその姿を変質、あるいは消失(厳密な意味ではありえないでしょうが)してしまう可能性も否定できないはずですよね?
それから、宇宙空間が本当に「何もない真空」であるかどうかということに、私は疑問を持っています。未だ観測できないダークマターの影響、その他、宇宙にはまだまだ観測されていない素粒子等があるように考えます。小柴教授で有名になったニュートリノですが、あれもカミオカンデにつかまってチェレンコフ光を出す「変化(水素原子との反応でしたか?)」を観測したものですよね。我々がまだ手にしていない未知の物質と反応をした後の光の姿を捉えることも、将来的な可能性としてはありえるのではないかと思っています。
素粒子物理学で言う6種類のクォークも、当初は3種類と言われていましたが、のちにもう3種類の発見がありました。あれは日本人でしたか??(自信なし)
それはいいのですが、ここにも大きなヒントはあるのかなと感じています。宇宙の始まりの時に起きたという粒子・反粒子における対生成・対消滅の繰り返し。しかしそれでは宇宙に物質が残る理由がないわけです。それで、あるクォークが別の世代のクォークに変わる「CP対称性の破れ」の証明によって物質が残る「理由」を示したのですよね。
このクォークにおける「世代変化」は初期宇宙にとって非常に重要なことだと思うのです。これが「偶然」か「必然」かの議論はできませんが、この証明によって宇宙に物質が残ることができたことは、ちょうどkyaoさんの仰られた「水素原子をどこから取り出すのかが大問題である」とか、「角運動量を得なくてはならない」というようななんらかの「突然変異的作用」を必要とするような事例に、幾ばくかのヒントを与えてくれるのかなとも思ったりします。

あと、オルバースのパラドックスにあるような…、もう止めます。終わりません(;一_一)

なんか、書きながらわけがわかったような、わからないような…(苦笑&涙)
殴り書き状態ですが、kyaoさん、楽俊さん、お許しください…(+o+)

あと、最近読んでる本…『物理学と神(著 池内了 集英社新書)』です(笑)
by 参明学士/PlaAri (2005-01-19 03:17) 

kyao

うお。なにやらすごいスレになってしまった(笑)。

参明学士さん、こんにちは。いつもレスをありがとうです。私の方こそ、大変楽しいやりとりをさせて頂けて感謝です。
また異常な長文になってしまいそうなので、私も気が付いたポイントについてだけお話しさせていただきます。悪しからずご了承くださいませ。

光は何者?…これって究極の質問ではないでしょうか。電磁波と言ってしまえばそれまでですが、グラビトンを除けばルクシオンに分類されるのはこの光子だけじゃなかったかな? どうして秒速30万Kmで動けるのか…不思議ですよね。
ただ、周波数の違いによって起きるのは、スピードの変化ではなく、エネルギーの大きさです。可視周波数の光よりガンマ線領域の電磁波の方がエネルギーが強いため、粒子としての性質も強く、他の物質に衝突して電子などをたたき出すことがあります。これがアインシュタインの最初のノーベル賞「光電効果」な訳です。(^^)
波であり粒子でもある、という光の2面性は実は他の物質にもあったりするんですね(これが量子力学につながるわけですが)。たとえば電子などの素粒子にも同様の性質があることが、ド・ブロイという物理学者によって発見され「物質波」として知られるようになりました。

宇宙にはさまざまな物質があります。そのため、宇宙空間を駆け抜けている間に他の天体の重力の影響を受け、光が赤方偏移することは十分あると思います(たとえばブラックホールの近郊を抜けようとする光とか)。これは2.3ケルビンの黒体輻射とは別に議論しないといけないですね。(^^)
重力による空間のひずみを抜けてくることで、光は何もない空間で屈折したように振る舞うことがあります。これが「重力レンズ」と呼ばれる効果です。非常によく似ている銀河が隣り合っているものの多くが、最近になって重力レンズ効果によって生み出された虚像であることがわかってきました。

カミオカンデって、ニュートリノ天文学で有名になってしまいましたが、あれはもともとG.U.T.が予言している「陽子崩壊」を確かめるための施設だったんですね。
水中など、密度の高い媒質では電子などの粒子の運動スピードが、その媒質中の光速を越えてしまうことがあります。そのときに電子は周囲に光子をまき散らしながら自らのエネルギーを減らすわけですが、このときの光をチェレンコフ光と呼びます。水中に置かれた原子炉の炉心を見ると、ほんのり青色の光を放っていますよね? あれがそうです。
ニュートリノは本来、非常に物質と相互作用をしにくい素粒子です。地球程度の物質密度では30個くらい並べても平気で貫通します。ですが、水(特に重水)のような物質が大量にある場合、ごくごくまれにそれらと相互作用して光子その他の素粒子を吐き出すことがあります。特に超新星爆発などがあれば、異常な数のニュートリノが飛来しますから、そのうちの数個は水と相互作用する可能性があります。カミオカンデでは水中に置かれた光電管でそれら光子をキャッチしたというわけです。
余談ですが、水は原子炉などで発生する高速中性子の遮蔽物としても知られています。鉛などの重金属は単に物質密度が高いと言うだけで中性子を遮蔽してはくれないんですね。原子炉の炉心が水中にあるというのは、こういう理由もあるわけです。(^^)

クォークが本当は6種類あるんじゃないか? と言われ始めたのは、他の粒子の対称性からなんですが、実はその奥に、日本に古来から伝わっている「陰陽道」からヒントを得たという話も伝わってますよ(笑)。

真空とは、その名の通り「何もない空間」ではないことが以前より知られています。真空中に高エネルギーのガンマ線を放出すると電子・陽電子の対が発生するのはそのせいです。かねてから陽電子の存在を予言していた物理学者のポール・ディラックにちなんで、これを「ディラックの海」と呼ぶわけです。

うは。またしても長文に…。極めて散文になってしまいましたが、どうぞお許しあれ。それでは、また!(^^)
by kyao (2005-01-19 09:24) 

参明学士/PlaAri

kyaoさん、コメントありがとうございます!
私の無茶苦茶な内容に応えて下さってありがとうございます。本当に感謝ですm(__)m

宇宙論をblogでやりとりする困難さを痛感したような気がしますね(笑)
宇宙のことを考えるとわくわくしてきますが、とりあえず今はいいかな。
「やっぱり星はきれいだな」っとさえ思えれば^^。
シリウスLOVE←人間を愛せよ(本当)
by 参明学士/PlaAri (2005-01-20 01:32) 

kyao

参明学士さん
こんにちは。いつもレスをありがとうございます。

>「やっぱり星はきれいだな」っとさえ思えれば
そうですねー。これがやはり基本だと思います。自分でいろいろSFやアニメを観ていて思うのは、理屈は常に後から付いてくるものなんですよね。まずは純粋に興味を持つこと・感動すること。すべてはここから始まるように思います。
いつかはオフ会でも開いて、みなさんともお会いして、直接こんなお話ができればなーとも思うのですよね。実現すればいいなあ…しくしく(旦那の「オフ会禁止令」のせいで、多分無理)。(;_;)
by kyao (2005-01-20 08:46) 

keisuke

全編、非常に楽しく拝見させていただきました。

突然ですが、
日米において1970年以降起業した会社、上位10位の業種を調べると、
日本はIT企業しかなかったのに対し、アメリカは製薬、石油、ITといいた多岐にわたっていることがわかりました。

日本の産業構造は、一つの発展してきた技術を中心にして、ほかの技術をひっぱりあげると考えられます。しかし一方、アメリカのほうは基礎科学のすすのが広いため同時進行的に多数の技術が発展しているため、はじめから発展したものどうしが相乗効果をもたらすようです。つまり、日本は新技術一つで新しいものを作り出すのに対し、アメリカは新技術多数の物で新しいものを作り出すと考えられるのではないでしょうか?どちらが革新的な可能性を秘めているかは言うまでもないことですよね。

また、バイオの分野でも計測機器は日本の企業が強いのですが。計測する対象の製品はアメリカ企業がにぎっているということもあります。

徒然なるままに書いてしまい申し訳ありませんでした。
by keisuke (2005-01-29 10:44) 

kyao

keisukeさん、初めまして。わざわざ訪ねてきてくださり、どうもありがとうございます。
以前、日本は欧米各国から「エコノミック・アニマル」と中傷されてきました。目先の利潤しか追求せず、すでに開発されていた欧米の技術をそのままコピーしたような形で経済力を上げ、先進各国に追いつこうとしていたからです。
ですが、今や日本は先進国の仲間入りをしました。発展途上国からは逆に追われる立場になった訳です。その結果、中国や韓国など、一部アジア諸国は数十年前の日本と同じ立場に立たされているとも言えます。
では、今の日本はどうでしょう。これまで先駆けとしてきた欧米諸国の発展は目に見えて鈍化し、まったく同じ道を日本も歩もうとしています。一部政治家や財界人はともかく、これまで見習ってきた欧米スタイルの社会性・経済性が破綻しているのは私たち国民の目には明らかなように思えます。

今、泥沼に首までどっぷり浸かっている状態を想像してください。気が付けば、自分の周りにも同じように首まで浸かっている人たちがたくさんいます。これが今の国内の経済・社会状況です。
周りの人の頭に手を乗せ、腕を突っ張れば他の人を沼の中に押し込めてしまいますが、自分だけは沼から抜きん出ることが出来ます。これが欧米諸国のスタイルであり、おそらくこれからも変わらないでしょう。
ですが、これまでの日本人は違っていたはずです。沼に浸かっている者同士がお互いに手を握り、自分の身体が沈んでしまおうと、周りの人たちの身体を押し上げようとしていたはずです。それは誰かが沼から出ることが出来れば、その後、自分も助けてもらえると信じているからです。言わば日本人だけが持っている心意気です。

欧米諸国のやり方の方が、論理的であり無駄がないことはkeisukeさんがご指摘くださったとおりです。ですが、今、日本国内で注目されているのは、「匠」「職人」「名人」と称される、実に非生産的な作業方法を熟知した人たちです。大量生産という社会構造の中、ひっそりと生き延びて、これらの人たちが今まさに息を吹き返そうとしているのはなぜか。よく考えていただきたいと思います。
仰るとおり、日本に欠けているのは基礎研究の部分です。この点において、欧米諸国は実に裾野が広い。今後の日本の課題は、ここに集約されると私は思っています。
by kyao (2005-01-29 15:09) 

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